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動物の〈いのち〉と人間の尊厳

 
 



河野勝彦 著

46判上製 226ページ
定価:2200円+税
ISBN
978-4-89259-961-3

 



尊厳ある存在である人間に比して、なぜ動物は無権利状態に置かれているのか。危機にさらされる「人間の尊厳」と動物の〈いのち〉を守るために、デカルトからデリダにいたる哲学者の人間観・動物観を俯瞰し考える。

まえがき

第1章 「人間の尊厳」とは何か、それをいかに守るか
 1.危機に立つ「人間の尊厳」「生命の神聖性」 
 2.「人間の尊厳」と「個人の尊重」 
 3.「人間の尊厳」と「人命の尊重」 
 4.なぜ人間には尊厳があるのか 
 5.人類の普遍的尊厳と個々人の人権・尊厳との対立 
 6.神としての人間:人間の尊厳はどこに求められるか 
 7.唯物論にとって「人間の尊厳」とは何か 
 8.人類の遺伝的形質を改変させることはなぜいけないか 
 9.人間の個体としての生命を守ること

第2章 「剥き出しの生」(la nuda vita)としての
           人間の生(Human Life as Bare Life)

 1.剥き出しの生と政治 
 2.剥き出しの生=ホモ・サケル 
 3.剥き出しの生としての人間 
 4.剥き出しの生としての動物 
 5.生の聖性と近代民主主義 
 6.剥き出しの生としてのゾーエーと政治

第3章 生命・生物・環境と倫理
 1.倫理の生物的起源 
 2.倫理の対象 
 3.植物と動物 
 4.工場畜産 
 5.有機畜産:動物福祉の動き 
 6.動物食と環境 
 7.動物肉食は許されるか

第4章 哲学者たちと動物
 1.動物は内的価値を持っている 
 2.動物と人間 
(a)ショーペンハウアーの動物観 
(b)マックス・シェーラーの動物と対置した人間観 
(c)ハイデガーの石と動物と人間の差異 
(d)デリダの動物論 
 3.今後の見通し

第5章 人間論の革新とデカルト
    ―尾関周二氏による機械論的自然観批判と関わって

 1.デカルト人間論がもたらした深刻な問題 
 2.機械論的自然観の射程 
 3.「心と身体の分裂」 
 4.「人間と自然の分裂」あるいは「二つの自然の分裂」
 5.「人間と人間の分裂」

第6章 尾関周二著『21世紀の変革思想に向けて
          ―環境・農・デジタルの視点から―』について

 1.環境思想の哲学的論争―人間中心主義か自然中心主義か―について 
 2.マルクスの「人間主義と自然主義の統一」について 
 3.物質代謝史観への疑問 
 4.「ホメオスタシス(恒常性)」概念の社会理論への拡大に対する疑念
 5.農業は「小農」でなければならないのか

第7章 実在論の新展開――問題となる論点
 1.実在論とは何か
 2.カンタン・メイヤスーの思弁的唯物論――相関主義をいかに打ち破るか
 3.グレアム・ハーマンの対象指向存在論――対象の四方構造
 4.マウリツィオ・フェラーリスの新実在論

第8章 哲学はなんの役に立つのか――哲学の役割
 1.哲学はなんの役に立つのか 
(1)世界観としての哲学 
(2)批評としての哲学 
(3)社会規範としての哲学 
(4)応用倫理学としての哲学 
(5)人格形成としての哲学 
2.現代において「哲学」とは何か 
3.反哲学は哲学の終焉か 
4.ハーバマス――哲学者になにができるか 
5.哲学の役割 

あとがき




著者紹介:河野勝彦(こうの・かつひこ)
1945年 姫路市に生まれる。1975年 京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得満期退学。現在 京都産業大学名誉教授。主な著書に『デカルトと近代理性』文理閣、1986年、『環境と生命の倫理』文理閣、2000年、『死と唯物論』青木書店、2002年、『現代課題の哲学的分析―環境の危機・人間の危機・アイデンティティの危機―』晃洋書房、2007年、『実在論の新展開―ポストモダニズムの終焉―』文理閣、2020年など。