明治初期、外国人医師が綴る日本文化史。京都療病院に招かれたヨンケルは、日本文化に強く惹かれた。あくなき探求心で、文学や地理、信仰などを調べ尽くす。現代人の知らない日本が、初の翻訳で今よみがえる。京都府立医科大学創立150周年記念出版。
第1章 日本の文学:日本語の構造、日本の文学と詩について
1 上代大和言葉
中国語と漢字の日本伝来/日本語と中国語の融合/こへとよみ/表音文字の仮名/筆記体/正字/大和仮名と万葉仮名/片仮名/平仮名/弘法大師/いろは/片仮名文字/平仮名文字/消える音/濁り/マル/書き方/繰り返し記号/句読法/長音節/二重音字/表音法と正字法/いろは文字で表した経
2 日本語の構造
名・詞・てにをは/名詞/代名詞/漢数字/動詞の語根/動詞の時制/動詞の終止形/動詞の連体形/動詞の活用形の種類/敬語/動詞の活用変化/受動態/形容詞/てにをは/助詞/語形変化するてにをは/語順/古い語順の特徴/連用言の言葉遊び
3 日本文学
紫式部と源氏物語/伊勢物語・枕草子・平家物語/漢学と仏書/草双紙/外伝/能/浄瑠璃/謡/詩と歌/中国語と日本語の詩形/頼山陽/歌/阿倍仲麻呂/歌の神話的起源/嘆き悲しむ未亡人/短歌/歌合と歌会/文学のゲーム/歌の暗喩の二重解釈/万葉集/歌連歌/さまざまな歌
第2章 文房具
1 紙
延喜式/和紙の製造に用いる植物/和紙の製造法/さまざまな和紙
2 墨
黒色染料の製造法/墨の製造法/硯/日本の容積単位
3 筆
硯箱/さまざまな筆記用具
第3章 大日本:日本の地理の概略
1 大日本
日本の正式名称/ケンペルの誤解/古い日本の名称/古い日本の国土/日本武尊/関東/アイヌ追放
2 地理的状況
瀬戸内海/下関海峡/壇ノ浦の戦い/日本の面積と人口/日本人の起源の仮説/古い日本の区分/神功皇后/新しい日本の区分/開拓使/軍事・司法・教育区分/山岳/火山/山の呼称/富士山/富士山の名称/富士山の姿/富士山の高度測定/富士山の有用植物とその用法/富士巡礼と登山道/富士山の山小屋/満月の富士山/歴史上の噴火/宝永山の誕生/硫気孔と大地獄/富士山の湖/御岳山/日光白根山/湯元温泉/湯滝と華厳ノ滝/中禅寺湖と男体山/日光の美/日光山と日光権現/徳川家康の墓/浅間山/血の池と血の滝/草津白根山/火口湖と有毒鉱泉 岩鷲山 恐山と岩木山 鳥海山 月山・飯豊山・磐梯山/那須山と鹿ノ湯温泉/焼山・妙高山・立山/白山・大山 大台ヶ原山・吉野山・比叡山/伊豆諸島の大島/新島/八丈島/三宅島/四国の石鎚山/九州の阿蘇ヶ岳/ティツィンクの雲仙ケ岳噴火記録/ケンペルの温泉記録/霧島山/嫗ヶ嶽・鶴見岳・開聞岳・桜島御岳/ケンペルの最初の硫黄島調査
3 河川
湖/滝/温泉/港と湾/条約港
4 郵便・電信・鉄道
5 2つの首都ほか
古都京都/西京/槇村正直知事と新時代/東京/横浜/鎌倉/大坂/神戸/奈良/新潟/長崎/出島/キリシタン迫害/北海道/駒ヶ岳/活火山/開拓使/千島列島/琉球諸島/小笠原諸島
第4章 大和漫筆:祭礼・ふるまい・風俗と種々のこと
1 はじめに
宗教祭/固定祝日と移動祝日/歓喜天/摩利支天/金毘羅/天狗/観世音菩薩/愛染明王/地蔵菩薩/賓頭盧尊者/鬼子母神/中将姫
2 日本の特筆すべき祭と大衆娯楽
1月:元旦/新年の挨拶/成願/桃符/鐘馗/元三大師/踏歌/松の徳/松の神話的な力/天満宮/菅原家と藤原家/醍醐天皇時代の文学/菅原道真の死後の復権/中国に伝わる松の神話/高砂の伝説/婚礼/嫁入り/結婚の儀式/七草/左義長祭/明帝の使節団/道教と仏教/炎の神判/三毬杖/爆竹/三毒
2月:祈念祭/稲荷様/初午祭
3月:雛祭/潮干/桜
4月:神々の祭/立夏/権現様祭
5月:梅雨/衛生対策/井戸/灸/面倒な客を追い返す方法/子供祭/ツツジ祭/不動尊祭と天満宮祭
6月:盛夏/京都の四条河原の涼み/碁と将棋/三味線/浄瑠璃/義太夫節/河東節/男伊達/一中節/常盤津節/清元節/富本節/新内節/流行歌/長唄/踊り/花車/芸者と舞妓/江戸の吉原の歴史/三従の犠牲者/着物/装飾品/髪飾り/枕/白粉と紅/殿上眉毛/歯黒/入歯/歯磨き/楊枝/歯黒の歴史/一条美子/日本女性の理想的な美しさ/大衆娯楽/豆蔵/辻講釈/噺家/新聞/馬場芝居/獅子/猿まわし/穢多と瞽女/芝居の歴史/芝居の演目/幕/観客席/舞台/照明/飲料/曽我祭/相撲取り/相撲の歴史/相撲の取組/神の祭/不浄/富士浅間の神/氷餅と氷室/大黒天祭/庚申祭/平将門と神田明神/900年後の復讐/嘉祥祭/夏越の祓/禊/お清めの神話的起源 /鎮祭と道饗祭
7月:七夕祭/盆/盆暮/魂棚/お迎い火と送り火/盆飾りの処分/地獄の安息日/葬礼/神道の葬儀/不浄/納棺/葬列/埋葬/お清め/後祭/墓碑/仏教の葬儀/納棺/通夜/富者の葬列/読経と献香/貧者の葬列/火葬/骨壺/喪中/石塔
8月:台風と八朔/釈迦如来降誕祭/八幡祭/十五夜月見
9月:菊の節句/皇室の紋章
10月:神無月/十三夜の月見/七福神/恵比寿/宝船/毘沙門天/弁財天/七面/布袋様/寿老人と福禄寿
11月:酉の祭/新嘗祭と大嘗会
12月:釈迦如来の成道/顔見世/暮れ/大晦日/松飾/しめ縄/をけら参り
第5章 日本の貨幣の歴史
【解題】ヨンケルの日本文化論(八木聖弥)
訳者あとがき(熊谷知実)
著者紹介;
著者:F. A. ヨンケル・フォン・ランゲック
(Ferdinand Adalbert Junker von Langegg)
監修:八木聖弥(やぎせいや)
1958年、京都市生まれ。京都府立医科大学研究教授。博士(文化史学)(同志社大学)。『太平記的世界の研究』『近代京都の施薬院』(ともに思文閣出版)など著書多数。
翻訳:熊谷知実(くまがいともみ)
1967年、秋田市生まれ。神戸大学大学院文化学研究科博士課程単位取得退学。京都府立医科大学非常勤講師。
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